ジフ・・・・ジフ・・・・?
 
ああ、ジフ、こんなところにいたのね?
 
 
 
フフッ
 
 
 
そうね・・・・。
 
もう、百生(ももせ)をも過ぎたわね。
 
 
 
五百もの生を二度も巡って
 
百世(ももよ)のときを共に過ごしたのね・・・・。
 
 
 
 
二人、赤い帯で結んで
 
もう、どれだけの刻を越えたのかしら・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ねぇ、スリョン。何処に生まれても、どれだけ離れても
五十(いか)も九十九(つくも)も、俺達は出会うんだ。」
 
「あら?それでは百度目は?」
 
「馬鹿スリョン。お前が外つ国になぞ生まれるから、今世は会えぬかと肝を冷やした。
俺が “ももよ” には辛い傷がある事を知っているくせに・・・・・?プイッ。」
 
「え?じゃあ・・・・・・」
 
「そうだよ。スリョナ・・・・・。今宵がようやく “ももよかよひ” の満願だ。」
 
「・・・・・・あぁ。・・・・・・そうだったのね・・・・・。今宵がそうなのね・・・・・。」
 
「百世も、百代も・・・・・・俺にはお前だけだ。スリョン・・・・・・。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ん・・・・。ジ・・・・・フ・・・・・・。わ・・・・たし・・・・・も・・・・・・」
 
「うん、何?スリョナ?」
 
 
 
ハッと、目覚めれば隣りには肩肘をついて優しく私を見下ろす琥珀の瞳。
 
 
 
『 ああ・・・・・。この瞳は千年経っても変わらないのだ・・・・・・・・。 』
 
そう言って心の中の、あの日の私が胸を震わせる。
 
 
 
途端にハラハラと涙を零し始めた私に、驚きながらも宥めるように甘く微笑んで
彼は千年前と変わらぬ仕草で私のそれをそっと拭う。
 
 
 
 
 
 
そして・・・・・
 
“私達” が愛しくてならない、あの低く甘い声音で囁く。
 
 
 
 
 
 
 
「おいで・・・・・?」
 
 
 
 
 
 
 
昨夜の睦み合いのままの、生まれたままの姿の私達は
溶け合うように温もりを合せ、香りを併せ、肌を逢わせる。
 
 
 
 
 
 
 
“あれ” から・・・・・
 
 
 
 
 
 
何度もこの男と出会い、この男を欲し、この男に添うた。
 
“百夜(ももよ)” の願いは “百代(ももよ)” もの刻を契り、昇華せしめた。
 
 
 
 
 
 
幾世も常しえに・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ジフ・・・・。」
 
「ん?」
 
「愛しているわ。」
 
「・・・スリョナ?」
 
「ジフ・・・・。ジフ・・・・・。」
 
「うん?」
 
「愛しているわ。あなただけを、アイシテル。
きっとあなたを離れては、生きることも出来ないくらいよ。
ずっと・・あなたの側にいたいの。
百夜も、千夜も、永(とこしえ)に・・・・・。
ずっと・・・・添うていたいわ・・・・・・・。」
 
「スリョン・・・・・・。俺もだよ。お前だけをアイシテル。
何度生まれ変わろうと、何度この生を終えようと、お前しか愛せない。
だからずっと俺の側にいて?百も千もの年月を越えても、俺の側に、ね?
そして何度でもこうして睦み合って添い合おう。永(とこしえ)に・・・。約束だよ?」
 
「ええ・・・・ええ・・・・・。今度も “また” 約束ね?」
 
「また? “また” ってどういう意味なの?」
 
「ううん・・・・。何でもないわ。ジフの事が好きすぎて、ジフの夢を見たの。
だから少しだけ、夢と現実の区別がつかなくなっちゃったみたいなの。」
 
「それは、悲しい夢だったの?」
 
「どうして?」
 
「だって・・・ほら・・・今もこんなに泣いてる・・・・・。」
 
「違うのよ。とても素敵な夢だったわ。この涙は、うれし涙よ。」
 
「そう?じゃ、俺にもその夢の話を聞かせてよ?
なんだか妙に聞きたいんだ。」
 
「うん・・・。少し長くなるけれど、良いかしら?」
 
「いいよ?だってそれは幸せな話なんだろ?」
 
「ええそうよ。とても幸せで、とても美しい話なの。」
 
 
 
 
 
 
 
それは、百代もの宵を、共に過ごした物語・・・・・・・・・。
 
あなたを愛し、あなたに愛された、わたしたちの HANA 。