「こんなにゆっくりとは出来ないと思いますが、学校帰りに時々2人で・・・あの・・・」
 
「帰っていらっしゃい。シン君は私達の息子なんだから、いつでも大歓迎よ♪」
 
「はい///。それで、今度は宮の、俺達の [家] のほうへも遊びに来て下さい。」
 
「ああ。いつでも会いたくなったら呼んでおくれ。
美味しいキムチと、2人の好物を持って、伺わせてもらうよ。」
 
「はい!ありがとうございます!今度俺にも料理を教えて下さい!
それから、チェジュン。後でお前のスケジュールを内官に教えておいてくれ。
俺との都合がついたら、一緒に乗馬の練習をしよう。きっとお前なら直ぐに覚える。」
 
「OK!ついでに、内官になる勉強方法もその人に聞いてもいい?」
 
「チェジュン・・・本気なのか?内官なんて・・・お前は好きなことを職業に選べるんだぞ?」
 
「俺、夢が出来たんだ。内官になりたいんだ。
だからヒョン、俺の夢を叶える為に、協力してくれよ!」
 
「・・・ああ。解った。それじゃあ、凄く厳しいのを1人、家庭教師に派遣しよう。」
 
「げっ!?そんなに厳しいのはちょっと・・・って、どれ位厳しいの?
俺、バンバン殴られちゃうとか?それとも、出来るまで飯抜きとか・・・?」
 
「クククッ。安心しろ。皇太子妃の弟に体罰を食らわせられるような内官はいないし
厳しいと言っても、容赦無く課題を出されるとか、その程度だろう。」
 
「・・・その程度って・・・・。ハァ。よし!男に二言は無いっ!
厳しい内官さんのスパルタ教育にも、噛り付いていってやるっ!
ヒョン、あと何年か、俺がヒョンのところに行くまで、待っててくれよなっ!」
 
「チェジュン、シン君様は・・・・・・。」
 
「ああ。了解した。待ってるからな。チェジュン。男の約束だ!」
 
「シン君様・・・・。」
 
「チェギョン。俺決めたんだ。もう、皇太子である自分から逃げるのは止める。
お前と一緒に、東宮殿を [家] だと思って、大事に守り抜いてみせる。
そしていつか、立派な皇帝とやらにもなってみせる。
チェギョン、お前がいてくれればそれが出来そうな気がするんだ。助けてくれるだろう?」
 
「はい♪私でお役に立てることがあれば何なりとお申し付けください♪」
 
「チェギョン。あなたが一番シン君を助けられるのは、多分男の子を産むことよ♪」
 
「スンレッ!?///」
 
「だって、そうじゃない?跡継ぎが生まれれば、シン君の地位は磐石になるわ。」
 
「いや・・・、あの・・・、お義母上。それは確かにそうなのですが・・・・///。」
 
「はい♪解りました♪私、シン・チェギョン、頑張って男のアカサマを身篭ります♪」
 
「「 チェ、チェギョン~~~!?!?/// 」」
 
「なんだよ、親父もヒョンも・・・。結婚したんだからそんなの当然だろ?
何でそんなに赤くなって動揺してるんだよ???」
 
「・・・チェジュン・・・。お前、子供の作り方って知ってるか?」
 
「はぁ?ヒョン、そんなの当たり前だろ。まず黄体ホルモンがだな・・・・・」
 
「うん。もういい。解った。 
お前がチェギョンの弟だってことはよーーーく、解った。
その内に、お前もこの会話がどれだけ赤面モノか解る日が来るよ。
お兄さんはその日を、心から楽しみにしてる。クククッ。」
 
「へ?」
 
「ブッ!クックックッ! 
チェジュン、俺もその日を楽しみに待ってるぞ!
シン君、その時は一緒に酒盛りだ。付き合えよ?」
 
「フフ。はい。喜んで。」
 
 
 
 
 
 
 
迎えに来ていたチェ尚宮が、会話の弾んでいるシン達に申し訳無さそうに
暇(いとま)の時が来たことを告げた。
 
 
 
 
 
 
 
「シン、チェギョン。いつでも帰ってきなさい。
君達の部屋はチェギョンが今まで使っていた部屋を整えておくから。
でも、本当にいいのか?それで・・・。」
 
「はい。お祖父様の部屋は、どうぞそのままにしておいて下さい。
俺達の縁を結んでくださった恩人ですから・・・・。
逢いたくなったらあの部屋に行けばいいのだと思っていたいんです。
お前もそう思うだろう?チェギョン。」
 
「はい♪私からもお願いします。パパ様、どうかあのお部屋はあのままで・・・。」
 
「わかった。俺たちもそのほうが嬉しいから、そうさせてもらうよ。
では、またな。学校帰りに寄る時は連絡してくれ。夕食を沢山作って待ってるから。」
 
「そうよ!遠慮はダメよ?あと、何か困った事があった時も電話してね?
何にも出来ないかもしれないけど、私達は何時だって貴方たちの味方だし応援団だから
電話口で笑い出したくなっちゃうくらい、元気を一杯分けてあげるわよ♪」
 
「「はい!」」
 
 
 
 
名残惜しさに何時までも尽きそうに無い会話は
チェギョンが入宮の際には見られなかった光景だった。
 
 
 
送るほうも、送られるほうも、其々に感慨深く、そして幸せだった。
 
 
 
いつでも会えると思うのに、別れは辛いものだと、シンはこの時心から思った。
幼い頃、別れを告げるのが辛い相手はチェギョンだけだった。
 
今ではチェギョンと共に、分かれ難い人々とそれを惜しんでいる自分がいることに
くすぐったいような照れ臭さを感じながらも、とても嬉しく、そしてとても幸せだと思った。
 
 
 
「お義父上、お義母上、それからチェジュン。
再会の約束の合図をしませんか?俺とチェギョンはいつもそうしていたんです。」
 
 
 
そういってあの、指の仕草を教え、皆で指と指を触れ合わせた。
互いに微笑みながらの別れには、涙は無かった。
サヨナラではなく、行って来ますと言って門を潜った。
 
 
 
そこから先は、シンとチェギョンではなく、皇太子と皇太子妃申氏がいた。
 
 
 
美しいロイヤル・スマイルを振り撒いて、先に御料車に乗る皇太子妃を
優しくエスコートした皇太子は、堂々とした佇まいに、高雅な笑みを添えて
ゆったりと車に乗り込んだ。
 
沿道の野次馬たちからも、取材に来ていたメディア達からも感嘆の吐息が零れた。
 
満開の桃の花に見送られるように
2人の貴人を乗せた御料車は前後の護衛の車に守られながら出発する。
 
 
 
 
それは、韓国が誇る、美しきロイヤル・カップルの誕生として
その日のトップニュースを煌びやかに飾るのだった。